「漆」と書かずに、「うるし」と書く。
この一つにも、漆器を特別なものとせず、日常のものとして感じて欲しいという思いが伝わります。
今日はとらや東京ミッドタウン店に「いつものうるし」展を見に、そしてその作家である桐本さんのトークショーを聴きに行って参りました。
桐本さんは、地元の輪島で異端と言われる作家さん。
しかし、異端がやがて主流になるがごとく、たとえ地元で異端でも、東京では日本橋三越で個人では最大の売り場をもつなど、最先端の人であります。
今回は11月15日まで(開始は9月1日)の長丁場。10月16日には展示品の入れ替えもあるそうです。
ギャラリーの様子はこちら。

こちらでは、椀をモチーフに、手前から反時計回りで、木を荒削りにしたところから、上塗りまでの全22工程を再現しています。
特に面白い過程は「布貼り」。文字通り、椀に布を貼って(ノリと漆を混ぜたもので貼る)吸い口や脚部を補強するものです。
私は浅学にして、漆器は木地に漆を重ねて塗るということは知っていたものの、こういった過程が入っているのは知りませんでした。
桐本さんは、木地を「骨」、布貼りを「筋肉」、上塗りを「表皮」と表現し、特に木地と布貼りは「いつまでも大切に使える器の基本」だと仰っています。この過程をしっかりした器は何度でも修復がきく、一生モノの器になるそうです。
他にも、漆の技法の違いも直接比べられます。
まずは伝統的な漆技法。朱には顔料が使われています。
次に、蒔地技法という手法。
これは塗りの段階で、輪島独自の珪藻土を練り込んだもの。そのざらざらした独特の感触が特徴です。
最後は拭き漆。
一度塗った漆を拭き取って(というよりも、すり込む感覚)仕上げます。その結果、漆の透明感が増し、下の木目が生きるのが特徴です。
他にも、販売もしておりまして、例えば作家さんらしい可愛いネーミングの夫婦杯や

すてきな食卓セットなどが購入できます。

なお、この箸置きなら500円くらいですよ。
漆は非常に優れて日常的な器で、もともと湿度を大変に好む性質を持っているので、しまい込まず(乾燥してしまう)、毎日使うのが一番なのだそうです。
そして、使い込めば使い込むほど、ツヤが増すのです。その理由は漆が高分子化合物だから。分子の大きさが大きいため、最初の頃の表面は実はかなり凸凹しているのだそうです。それが使い込むほど、山がなだらかになってツヤが出てくるのだそうです。
なお、漆は確かに食洗機では使えませんが、もともと洗剤を使わなくても汚れが落ちるので、ぜひ日常で試して欲しいそうです。
最後に、百年近く前の漆の食器でとらやのぜんざいをいただきました。
口をつけると、すっと馴染む。これが漆の良さですね。
さて、ここで大事な予告!
11月に予定している第4回デザイートのゲストは桐本さんの予定です。
桐本さんをお招きして、実際に漆の器で食事を味わうと共に、伝統工芸品のマーケティングについて考えてみたいと思います。
ご期待下さい。