2008年08月13日

コーチと個人戦術

お盆なので、思い出話を。

私達が高校生の時、ウチのチームには素晴らしいコーチがいました。
柏木さんというコーチで、見た目は今の私に負けないくらい丸々としてました。しかも、本業はガソリンスタンドのオーナーなので、本当に「仕事の合間を見て」コーチにくるので、週に1回も会えれば良い方でした。 しかし、このコーチ、高校時代に全国高校サッカー選手権大会で3位(当時のチームメイトには、現レッズ監督の藤口 光紀氏がいた)に輝いた人でもありました。(まあ、そうは見えないくらい丸々としていましたが)

このコーチが教えてくれたのは、徹底的に「個人戦術」。
毎日毎日、コーチが教えてくれるのは、「トラップ」と「インサイドキック」だけ。

インサイドキックで言えば、コーチ曰く「インサイドキックが出来れば他のキックは要らないくらい重要」で「30mくらいの距離はインサイドキックでシッカリ出すべき」だそうです。
この時代では正直、異説なのですが、実際に現代サッカーでは、この説はもう当たり前です。

トラップで言えば、このコーチの教えでは、「トラップはボールを待っては駄目、必ず一歩でもボールに寄ってトラップすること」を教えられます。
何故か?
それはボールに寄ってトラップする方が難しく、しかし相手の選手が居る以上、ボールに寄ってトラップせざるを得ないから。だったら実践的なトラップをする方がよい。しかも、ボールによると当然相手も寄ってくる。(当たり前ですが、もし相手が寄ってこなかったら、トラップした相手を自由にしてしまうからです)
そうすると、ボールに寄りながら「引きトラップ」(ボールに寄りながら、トラップの際にボールを引きながらトラップすることで反転し、相手を置き去りにするフェイント型のトラップ)をすることもできます。

つまり、普通にトラップすると次の動き出しがワンテンポ遅れてしまう。それに対してボールに寄ることで、そのまま相手を振り切って前にトラップしたり、相手が着いてきたら引きトラップで反転して抜けたり、とプレーの幅が非常に広がるのです。

それでは、なぜ皆がそういうトラップをしないのか?
それは、ボールに寄りながらのトラップが(止まってトラップするのに比べ)格段に難しいからです。なぜならボールのスピード+自分のスピードなので、トラップの難易度が急激にあがるからです。しかし、このコーチのすごいところは、それが「技術」と結びついていること。
コーチが教えてくれたのは「ケンケントラップ」。トラップするときに「ケンケン」(片足で2ステップする)するのです。そうすると、トラップする足(ケンケンの時に地面に着かない足)に力が抜けて、シッカリとトラップできます。しかも引きトラップもすごくやりやすい。

インサイドキックにしても「30m」蹴るには、重要なのはけり足ではなく「立ち足の膝のおくり方」にあることなど教えてくれました。ではコーチが30mのインサイドキックにこだわったのは、「受け手が次のプレーに移行しやすいのはインサイドキックで蹴られた素直なボール」だからです。
ウチのチームは逆襲速攻をベースにしたチームでした。そういうチームはインサイドキックやインフロントキックで大きく展開するのですが、そのボールは浮き球のためトラップで流れが止まる。だからインサイドキックでワントラップがそのまま次のプレーに流れるようにプレーさせているのです。

ちなみに、僕は当時から左サイドバックでしたが、「トラップは右足で」と教えられました。
左サイドバックは主に自分の右側からボールが来る。つまり、体が右側に開いてプレーをします。そのときに右足でトラップすると、その足が次の一歩目にストレートにつながります。左足でトラップすると一歩目が止まってしまうのです。ここでも、「技術が次のプレーにつながって」いるのです。

いや、正確に言えば「次のプレー=戦術」のイメージがあり、それを達成するために「技術」があります。しかも、その技術に「具体的な解決方法=ケンケントラップや立ち足のおくり方」という解決方法が提示されます。つまり「技術は個人戦術まで昇華されなくてはならない」のです。

もちろん、「相手のどちらの足でトラップさせるかを意識してパスを出す」ことは、もう当たり前に教えられました。コーチ曰く、「パスを受ける選手に、次にどういうプレーをさせるか、をイメージしてパスを出す」ということが必要なのです。

こう書いてくると、私の今までの記事で言いたいことが分かると思います。
日本の選手のトラップは「トラップとして独立して」います。これを「技術」と言います。
しかし、トラップを「次のプレーへの流れ」で考えれば、これは「個人戦術」です。

まさに全ての技術が「個人戦術」のレベルに高められていた選手が中田英寿でした。
逆に技術が技術のままだった(過去の話ですよ)典型が、かつての中村俊輔だったのです。
デルピエロ(体が小さいので日本のFWの見本になります)がすごいのは、ワントラップ目が「自分の得意なキックの位置への移動課程」になっているからです。
私は「中盤のトラップとFWのトラップは違う」と書きましたが、これはそういうことです。自分の一番良い形にもっていく技術が日本選手に不足しているのです。

もし、この記事を読んでいるお父さんコーチがいたら、ぜひこの「次をイメージした技術」を子供達に教えてあげてください。



posted by BLC at 08:51| Comment(0) | TrackBack(0) | No Life, No Football | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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